インタビュー
公開日2018年8月29日
更新日2018年9月12日

老舗食堂がプログラミング?!

プログラミング教育で実現される、誰もが身近な問題をプログラミングで解決する社会

老舗食堂の社長
小田島 春樹
おだじま はるき

三重県伊勢市で老舗食堂 兼 お土産物屋「ゑびや」営む小田島さんに、来客予測という自らの問題をプログラミングでどう解決しようと挑戦しているのか、また、プログラミングを誰もが学ぶ意義は何なのか語っていただきました。

どんなお店で何をしてきたのかご紹介いただけますか?

伊勢神宮の前に食堂や土産屋がたくさんあります。「ゑびや」はその中の一つで、創業大正元年の老舗です。このお店は実家で、私はお店を継ぐため、2012年に入社しました。私が入社した当時は、お店の中は何のIT化もされておらず、お客様に関するデータは何もありませんでした。勘と経験で仕入れや接客を行っていたのです。伊勢神宮の内宮近くという好立地に恵まれ、数多くの観光客がお店の前を通りますが、口コミグルメ紹介サイトなどでの評価は低く、この頃は経営状態も非常に厳しいものでした。

私は、この状況を打開するためにはデータが必要だと考えました。まず初めに、1日の営業が終わったら、その日に使った手書きの食券や伝票の情報を表計算ソフトに入力しました。すると、どんなものがよく売れたのかを把握できるようになりました。

その後、飲食店の仕事に慣れてくるようになると、観光予測プラットフォーム(公益社団法人日本観光振興協会)も活用しました。これらのデータを組み合わせてみると、どこの地域からどんなお客様がいらして、どんなものをお召し上がりになるかが分かるのです。そこで、データをもとにメニューの開発や仕入れ、店頭広告などの工夫を行いました。

そして、現在では画像認識AIから得られるデータと様々なデータを使って来客予測AIシステムを作り、経営に役立てています。

具体的に、どんなシステムなのかご紹介いただけますか?

はい。こちらがそのシステムになります。

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クラウドのAI画像認識技術を使って、お店の前に設置されたカメラの画像から、お客様のおよその年齢や性別が分かるようになっています。さらに、そのお客様がお店に入ってこられたのか、素通りされたのかもわかります。別途収集した気温や湿度、天候などのデータをと合わせてみると、どういう条件の時にどんなお客様がご来店いただいたのかわかるようになりました。また、店内でご注文いただいたお客様のデータは、接客担当の従業員がPOS端末から情報を入力しますので、これらのデータを組み合わせてみていくと、次に何を行うべきかが見てきます。

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例えば、ゑびやに入店くださったお客様の男性比率は44.7%だとカメラからわかりますが、その商品の購買比率は20.2%だということがレジのシステムからわかります。入店くださっているお客様の年齢層もカメラの画像からわかりますので、今後どのような商品を店頭に並べるべきかが判断できるというわけです。

なるほど、小田島さん自身が直面した食堂経営の問題を、自らプログラミングやAIを活用することで解決していらっしゃるのですね!

そうですね。この仕事を始めるまでは、パソコンで表計算ソフトを使うくらいのことはしていましたが、プログラミングまでは行っていませんでした。このシステムも最初の部分はコンピュータ屋さんに作ってもらいました。やがて様々な種類の大きなデータを扱うようになり、やりたいことが増えてくるとデーターベースを触れた方がほうがいいと感じるようなり、会社の仲間とSQL言語について勉強するようになりました。さらに、様々な分析を行うために毎回表計算ソフトを加工していては大変時間がかかるので、分析の自動化ができないかと考え、自らR言語を学ぶようになりました。それまで、プログラミングを自ら行うということはありませんでしたが、同じ問題意識を持つ会社の仲間と楽しみながらプログラミングに取り組みました。いろいろなことが出来るようになるにつれて、達成感を感じるようになってきています。

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されます。

身の回りで起きる物事は、関連するデータを見てみると理由が分かりますし、どのように解決したらいいのかのヒントが隠されていることがあります。このデータをコンピュータで整理したり分析したりすると問題解決の役に立つことがあります。以前はコンピュータでデータを扱おうとすると難しいプログラミングをしないといけなかったようですが、最近は安くて簡単なプログラミング環境が提供されていますし、ブロックを積み上げるようなビジュアルプログラミング環境も整ってきています。小学校の頃から子供たちがプログラミングに慣れ親しむことで、データを分析することがそんなに特別なことでないことに気づき、自分でも何かやってみようと思うことはとてもいいことだと思います。

私たちのように伊勢の食堂がプログラミングを通じて、経営改革に取り組んでいることからもお分かりのように、今後の仕事や生活、そして社会はICTとより密接に連携していくことになります。プログラミングやAIの活用を通じて、楽しく快適な社会を作っていく人材を育成していってほしいと思っています。

小田島 春樹
おだじま はるき

1985年生まれ。日本大学商学部卒業後、大手通信キャリアに勤務し、人事や新規事業開発を担当。2012年より三重県伊勢市で100年続く家族経営の老舗食堂 兼 お土産物屋 「ゑびや」に入社。2017年より代表取締役社長。画像データと天候などの様々なデータを分析して、来店予測を行い、経営改革に取り組んでいる。