インタビュー
公開日2018年8月30日
更新日2018年11月7日

小学校理科におけるプログラミング教育

小学校理科におけるプログラミング教育について、なにを狙いとしてどのように行われることが期待されるのか、文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官の鳴川 哲也さんにお話を伺いました。

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官
鳴川 哲也
なるかわ てつや

小学校理科におけるプログラミング教育をお聞きしました。

Q1. 理科においてプログラミング教育はどのように扱われるのでしょうか?

 小学校におけるプログラミング教育は,プログラミング的思考を育むために行います。「プログラミング的思考」とは,自分が意図する一連の活動を実現するために,どのような動きの組み合わせが必要か,どのように改善していけばより意図した活動に近づくのかということを論理的に考えていく力です。

 小学校においては,教育課程全体を見渡し,プログラミングを実施する単元を位置付けていく学年や教科等を決定する必要があります。小学校学習指導要領では,算数科,理科,総合的な学習の時間において,児童がプログラミングを体験しながら,論理的思考力を身に付けるための学習活動を取り上げる内容やその取扱いについて例示されています。

 小学校理科においてプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、第6学年「A物質・エネルギー」の(4) における電気の性質や働きを利用した道具があることを捉える学習など,与えた条件に応じて動作していることを考察し,更に条件を変えることにより,動作が変化することについて考える場面で取り扱うものとすると示されました。これは、「電気の利用」という内容になります。

 ここでは、日常生活との関連として、エネルギー資源の有効利用という観点から、電気の効率的な利用について捉えることが大切です。子供たちは、身の回りには、温度センサーなどを使って、エネルギーを効率よく利用している道具があることに気付くと思われます。そこで、実際に目的に合わせてセンサーを使い、モーターの動きや発光ダイオードの点灯などを制御するなどといったプログラミングを体験することを通して、その仕組みを体験的に学習し、学習内容の理解を深めます。このように理科では、学習上の必要性や学習内容との関連付けを考えてプログラミング教育を行うことが大切です。

Q2. 理科におけるプログラミング教育の実践事例について紹介いただけますか?

 新学習指導要領では、第6学年「電気の利用」が例示されましたので、「電気の利用」における実践事例を紹介します。

 本内容は、大きく以下の3つの内容によって構成されます。

(ア) 電気は,つくりだしたり蓄えたりすることができること。 (イ)電気は,光,音,熱,運動などに変換することができること。 (ウ)身の回りには,電気の性質や働きを利用した道具があること。

 プログラミング教育は、この中の(ウ)に位置付けられて、実践されています。手回し発電機や光電池を使って電気をつくりだしたり、コンデンサーなどに蓄えたりできることを学習し、その電気を使って、発光ダイオードを点灯させたり電子オルゴールを鳴らしたりして、電気が、光、音、熱、運動などに変換することができることを捉えます。

 このような学習を通して、子供たちは電気を利用して生活していることを自覚するのですが、エネルギー資源の有効利用という観点から、電気の効率的な利用について捉えることが大切になります。

 実践では、子供たちは身の回りから電気を効率よく利用している例を探す活動が行われました。すると、「玄関の家のライトは、人が来た時だけ点灯する」「学校のトイレもそうだね」などといったように、センサーが働くことで作動時間が制御され、電気が効率よく利用されていることが発見されました。

そこで、「センサー」「プログラミング」という言葉を確認するとともに、家の玄関などを想定して、「人がいなくなったらライトが点灯し、人がいなくなったら消灯する」などといった一連の動きをプログラミングするといった活動を行いました。みんなでどのようなプログラミングだと自分たちが意図した動きが実現できるのかを確認した後、もう一度自分たちの生活に目を向け、電気を効率よく利用することについて考えることで、本学習内容への理解が深まりました。

Q3. 上記の実践事例以外で、理科においてどのような単元でプログラミング教育が実践できそうでしょうか?

 理科では、学習上の必要性や学習内容との関連付けを考えて、プログラミング教育を行う単元を位置付けることが大切です。第6学年「電気の利用」の例示もこのことを十分踏まえたものです。プログラミングを効果的に取り入れることで、理科において育成を目指す資質・能力の実現を図ることができるような上記以外の実践も可能でありその実践を期待しているところです。

Q4. 一方で、 理科におけるプログラミング教育について、どのような授業は適切ではないとお考えでしょうか?

 もっとも気を付けなければいけないことは、学習上の必要性や学習内容との関連です。これがなければ、その授業は適切とは言えません。

 第6学年「電気の利用」では、エネルギー資源の有効利用という観点から日常生活を見直すことで、「センサー」や「プログラミング」に気付き、実際に体験的に学習するからこそ、内容を深く理解することにつながります。エネルギー資源の有効利用という視点が貫かれていることが重要なのです。

 また、一人で黙々とコンピュータに向かっているだけで授業が終わるような授業は適切とはいえません。理科では従来より問題解決の活動を大切にしています。解決したい問題について、自分の考えを持ちながらも、友達の考えを尊重しながら、みんなで解決していくのです。仮にタブレットが一人に1台用意できたとしても、タブレットの台数や使い方を工夫する必要があると思います。

Q5. 理科においてプログラミング教育を行う際、どんなプログラミング環境や教材があると望ましいのでしょうか?

 理科は問題解決の活動を大切にしています。その活動の中核をなすのは、観察、実験です。ですから、実際に子供たちが直接操作して、繰り返し試すことができる教材があることが望ましいと思います。

 また、学習内容との関連を図ることが重要ですから、理科の授業で扱っている教材を生かせるプログラミング教育の教材であるということも大切な視点だと思います。第6学年「電気の利用」の学習では、豆電球、発光ダイオード、コンデンサー、光電池、手回し発電機、電子ブザーなどといった教材を使用して学習し、内容の理解を深めていますから、これらとは全く異なる教材を使用するよりは、それらを活用できるプログラミング教育の教材のほうが理解しやすいと思います。

 さらに、プログラミングを行う際のビジュアル型言語の意味がわかる補助シートやグループで話し合う際のカード、教師が黒板で使う提示物など、子供たちの学びを補完するアイテムもかなり重要だと思います。

Q6. 最後に、プログラミング教育にどの様な期待をお持ちでしょうか?

 平成28年12月の中央教育審議会答申において、「身近なものにコンピュータが内蔵され、プログラミングの働きにより生活の便利さや豊かさがもたらされていることについて理解し、そうしたプログラミングを、自分の意図した活動に活用していけるようにすることもますます重要になっている」と示されています。理科では、日常生活や社会との関連を重視していますから、プログラミング教育を行うことで、理科で学んだことが自分たちの生活や社会と関係しているという意識が高まり、理科を学ぶことの意義や有用性を実感することにつながることを期待しています。

 また、プログラミングでは、自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であるかを考えることになります。このことは、問題解決の活動を一層意識することにつながると考えています。自然の事物・現象から見いだした問題を一連の問題解決の活動を意識しながら、論理的に解決していく学習活動が充実することを期待しています。

鳴川 哲也
なるかわ てつや

福島県公立小学校教諭、福島大学附属小学校教諭、福島県教育センター指導主事、公立学校教頭、福島県教育庁義務教育課指導主事を経て、平成28年4月より現職。