インタビュー
公開日2018年9月3日
更新日2018年11月7日

小学校総合的な学習の時間におけるプログラミング教育

小学校総合的な学習の時間におけるプログラミング教育について、なにを狙いとしてどのように行われることが期待されるのか、文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官の渋谷 一典さんにお話を伺いました。

文部科学省初等中等教育局教育課程課 教科調査官
渋谷 一典
しぶや かずのり

小学校総合的な学習の時間におけるプログラミング教育をお聞きしました。

Q1. 総合的な学習の時間においてプログラミング教育はどのように扱われるのでしょうか?

 総合的な学習の時間では、小学校学習指導要領第5章第3の2(9)において、「情報に関する学習を行う際には、探究的な学習に取り組むことを通して、情報を収集・整理・発信したり、情報が日常生活や社会に与える影響を考えたりするなどの学習活動が行われるようにすること。第1章総則の第3の1の(3) のイに掲げるプログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、プログラミングを体験することが、探究的な学習の過程に適切に位置付くようにすること。」と示しています。

 総合的な学習の時間は、総合的・横断的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目指しています。したがって、プログラミングを体験しながら論理的思考力を身に付けるための学習活動を行う場合には、探究的な学習の過程において、自分たちの暮らしとプログラミングとの関係を考え、プログラミングを体験しながらそのよさや課題に気付き、現在や将来の自分の生活や生き方とつなげて考えることができるようにすることが必要です。

Q3. 総合的な学習の時間においてどのような単元でプログラミング教育が実践できそうでしょうか?

 デジタル目覚まし時計、スマートフォン、テレビ番組の予約録画、電子炊飯器や冷蔵庫、全自動洗濯機、ロボット掃除機、エアコン、風呂の給湯システム等々、私たちを取り巻く生活の中は、誰かが作ったプログラムで働く便利な道具であふれています。これからの社会を担う子供たちにとって、身近な生活でコンピュータが活用されていることに気付き、コンピュータの動きをよりよい人生や社会づくりにどのように生かすことができるかなどと考えるのは、とても大切なことです。

 総合的な学習の時間では、情報に関わって、例えば「情報化の進展とそれに伴う日常生活や社会の変化」に関する探究課題を設定し、これに基づく単元を構成することが考えられます。そこでは、「多様な情報手段の機能と特徴」「情報環境の変化と自分たちの生活との関わり」「目的に応じた主体的な情報の選択と発信」などについて、探究的な学習が展開されていきます。

 この過程において、プログラムの働きについて実感を伴って理解するために、実際にプログラミング体験を通して、コンピュータに意図した処理を行うよう指示する学習活動を行うことは、小学生にとって発達段階的にも有効です。プログラミング体験を行うことで、子供たちは、プログラムの仕組みを知るとともに、身近にプログラムで働くものと自分たちの生活との関わりについて、興味・関心を深めながら探究していくことでしょう。

Q4. 総合的な学習の時間におけるプログラミング教育について、どのような授業は適切ではないとお考えでしょうか?

 適切ではない学習活動については、小学校学習指導要領解説総則編の中で解説されていることを踏まえる必要があります。具体的には、「プログラミング言語を覚えたり、プログラミングの技能を習得したりすることではないこと」「論理的思考力を育むとともに、プログラムの働きやよさ、情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き、身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと」です。

 これを踏まえるならば、総合的な学習の時間においてプログラミングを行う際は、「現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題」として、例えば「情報化の進展とそれに伴う日常生活や社会の変化」のような探究課題を設定し、育成を目指す具体的な資質・能力の実現に向け、プログラミングを体験することが「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という探究的な学習の過程に必然的に位置付けられていることが欠かせません。仮に、「あらかじめ設定された課題に沿って、児童がプログラミング言語を用いてコンピュータに命令を入力し、試行錯誤の末、思い通りに動かすことができるようになり、その成果を発表する」のように、プログラミングを体験することだけをねらいにした学習活動が行われるとしたら、それは、「横断的・総合的な学習を行うことを通すこと」「探究的な学習の過程上、必然性をもって位置付けられていること」の点から、総合的な学習の時間として適切ではないものと言えます。

Q5. 総合的な学習の時間においてプログラミング教育を行う際、どんなプログラミング環境や教材があると望ましいのでしょうか?

 総合的な学習の時間は、他者と協働して主体的に取り組む学習活動を重視しており、例えば、発表活動を効果的に行うためには、音声や映像の編集、プレゼンテーション等のソフトやプロジェクターなどを整備しておくことが望まれます。また、児童間の情報共有や協働的な学習を促すためには、複数の児童が同じ画面を見ながらそれぞれのアイデアを記入することができるようなツールや他の児童の考えにコメントを付けられるような仕組み。アイデアを視覚的に表したり整理したりできるようなソフトも有効です。

 ほかにも、民間と連携した指導体制の確保や教員研修の充実などを行っていくことも、学習活動の充実には欠かせないものです。

 このように、プログラミング教育の実施に当たっては、主体的・協働的な学習活動を支える環境の整備が大切だと言えるでしょう。

Q6. 最後に、プログラミング教育にどの様な期待をお持ちでしょうか?

 総合的な学習の時間において、「探究的な学習の過程」の一層の充実が求められているなか、プログラミング教育を行うことが探究的な学習の質的充実に寄与することにつながることが期待されます。

 プログラミング教育においては「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力(プログラミング的思考)」の育成が目指されます。これらは、探究的な学習の過程において、自分の課題の解決に向け、学習活動の見通しを明らかにする「課題の設定」や、収集した情報をもとに因果関係を導き出したりする「整理・分析」のプロセスの中で活用・発揮される力と深く関わっているものと考えられ、総合的な学習の時間の質的充実につながるものであると考えられます。

 また、プログラミング教育の推進により、地域の人的・物的資源の一層の活用が図られることが考えられます。これにより、地域から総合的な学習の時間への理解と協力が得られるようになるとともに、児童も地域に積極的に関わっていくようになるなど、学校と地域との互恵性が深まる効果が期待できると思います。

渋谷 一典
しぶや かずのり

札幌市立小学校教員、札幌市教育委員会指導主事を経て平成29年4月から現職。生活科及び小中高等学校の総合的な学習の時間に関する研究及び学習指導要領に基づく専門的・技術的な指導・助言に当たっている。