インタビュー
公開日2018年9月10日
更新日2018年11月7日

小学校国語科におけるプログラミング教育

小学校国語科におけるプログラミング教育について、なにを狙いとしてどのように行われることが期待されるのか、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官の菊池 英慈さんにお話を伺いました。

文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官
菊池 英慈
きくち えいじ

小学校国語科におけるプログラミング教育をお聞きしました。

Q1. 国語科においてプログラミング教育はどのように扱われるのでしょうか?

 国語科におけるプログラミング体験については、学習指導要領に示されている国語科の内容を指導する中で実施することとなります。したがって、国語科の目標や内容に示されたことが達成されることを前提としながら、国語科の学習が広がったり深まったりするように、プログラミング体験を位置づける必要があります。

 例えば、言葉の特徴や使い方に関する事項のうち、話し言葉や書き言葉、言葉遣いについて学習する場面を例にして考えてみましょう。相手、目的や意図、場面や状況などに応じて、どのような言葉を選んで表現するのが適切であるかを、言葉の意味、働き、使い方等に着目しながら考えていくことになりますが、このような学習場面においてプログラミング体験を結び付けていくことが考えられます。相手、目的や意図、場面や状況などの条件に応じた言葉をどのように選択し、順序立て、組み合わせたらいいのか、言葉の組み合わせをどのように改善していけば、より適切な文や文章に近づくのか、といったことを論理的に考えていくことができるようなプログラミング体験を取り入れることができれば、言葉の適切な使い方に関する理解を一層深めることができると思います。また、言葉と言葉のつながりや文や文章の構成をより分かりやすく意識することや、語感を磨くことにもつながると考えています。ただし、このようなプログラミング体験を取り入れていく際には、学習内容との関連付けや指導のねらいを明確にするとともに、児童の負担過重とならない範囲で実施していく必要があります。

Q2. 国語科におけるプログラミング教育の実践事例について紹介いただけますか?

①自分が表現したい場面を必要な助詞を選択して文に表すことを通して、文の中における主語と述語の照応関係や助詞の正しい使い方について学習する事例(第2学年)

「は」、「を」、「が」、「に」の助詞を入れ替えながら文を作成するプログラミング体験を通して、主語と述語の照応関係や助詞の正しい使い方について理解することができるようにします。

【学習の位置付け】

 この学習は、文の中での主語と述語や、助詞「が」「は」の役割に気付き、主語・述語を結び付けて場面を説明する学習をした後に展開することが想定されます。主語と述語で構成された文をさらに詳しく表現するため、「を」「に」といった助詞の正しい使い方についても学習していきます。

【学習活動とねらい】

 学習活動としては、いくつかの例文を提示し、自分が意図した場面(条件)にするためにはどのような助詞を選択すればよいのかというプログラミング体験を行うことが考えられます。具体的には、まず学級全体で「ねこ( )ねずみ( )おいかける。」の文を例に、助詞の「が」または「を」を選択して文の中に当てはめ、1文字入れ替わるだけでも場面(イラスト)が変わってしまうことに気付くようにします。次に、「わたし( )ボール( )かご( )なげた。」の文に、助詞の「は」「を」「に」を選択して当てはめるプログラミング体験を行います。これにより、どのように順序立てて文字を組み合わせれば、自分が表現したい場面(条件)になるのかを児童が試行錯誤していき、主語と述語の照応関係や助詞の正しい使い方について考えることができるようにします。

②相手と自分との関係を意識しながら、尊敬語や謙譲語などの敬語について学習する事例(第5学年)

場面や人物を想定し、それらに合った敬語を選択するプログラミング体験を通して、敬語について理解し、日常生活の中で進んで敬語を使って話したり、適切に使い慣れたりすることができるようにします。

【学習の位置付け】

 この学習は、相手と自分との関係を意識しながら適切な敬語を選択することを通して、敬語の役割や必要性を感じ、伝える相手や場面に応じた表現の違いについて考える単元の導入として展開する事が想定されます。

【学習活動とねらい】

 学習活動としては、場面や人物を想定し、それらに合った敬語を選択することにより、児童自らが考え、その仕組みを発見できるようにプログラミング体験を行うことが考えられます。具体的には、まず学級全体で「家族以外の大人と電話で話をする場面」を例に、対話スクリプトのプログラミング体験を通して、適切な敬語表現を選択できるようにしていきます。次に、「好きな食べ物インタビューをした結果を、友達に報告する場面」を例として、ペアで対話スクリプトのプログラミング体験をしながら、相手と自分との関係を意識した適切な会話表現について考えさせていきます。

 このような学習を通じて、身内である家族のことを伝える際にはへりくだった表現を用いること、一方で、先生や地域の方などのことを伝える際には尊敬の意味の表現を用いるといった、敬語の適切な使い方について気付くようにしていきます。

Q3. 上記の実践事例以外で、国語科においてどのような単元でプログラミング教育が実践できそうでしょうか?

 内容の〔知識及び技能〕「(1)言葉の特徴や使い方に関する事項」に関連付けると、プログラミング体験を取り入れていきやすいと思います。

Q4. 一方で、国語科におけるプログラミング教育について、どのような授業は適切ではないとお考えでしょうか?

 プログラミング体験そのものが目的とならないよう配慮する必要があります。そのためには、国語科としてどのような資質・能力を育むためにプログラミング体験を取り入れるのかを考え、授業を組み立てることが大切です。学習上の必要性や学習内容との関連付けがなければ、その授業は適切ではないと言えます。また、コンピュータ上だけで完結してしまい、自分一人だけで学習することに終始してしまう授業では、学びの深まりをつくりだすことはできません。単にコンピュータに指示を入力して終わりではなく、児童自身が試行錯誤することができる仕掛けや、児童同士が学び合う場面や教師が関わる場面を意図的かつ計画的に位置付けていくことが重要です。

Q5. 国語科においてプログラミング教育を行う際、どんなプログラミング環境や教材があると望ましいのでしょうか?

 言語活動の中で、相手、目的や意図、場面や状況などに応じて、どのような言葉を選んで表現するのが適切であるのかを判断するものであったり、子供が主体的に学習に取り組んだりすることにつながるプログラミング環境や教材が望まれます。そのために、簡単に操作できるものや、適切な表現であるかどうかの判断が分かりやすくできるもの、児童が一人でも繰り返し使うことができるものなどが望ましい教材になると思われます。また、Q2で紹介したように、適切な文や文章をつくるために、どのような言葉を選択したり組み合わせたりしたのかを確認したり伝え合ったりすることができる教材であれば、ペアやグループでお互いの文や文章、考えなどについて共有したり交流を図ることもできると思います。なお、Q2で紹介した事例はScratchを活用した実践ですが、場面や状況、選択する言葉については創意工夫して替えることができます。学校や児童の実態等に応じて、教材の中身を工夫していくことによって、一層充実した国語科の学習にもつながると考えています。

Q6. 最後に、プログラミング教育にどの様な期待をお持ちでしょうか?

 新学習指導要領の国語科の各学年の目標には「順序立てて考える力」や「筋道立てて考える力」を養うことが挙げられています。こうした自分の思いや考えを順序立てたり筋道立てたりして考えることができる力が、プログラミング体験を通してより一層育成できるようになると考えています。

 ところで、「小学校プログラミング教育の手引き(第一版)」には、国語科において物語を読む学習をした後、学校裁量の時間を使ってアニメーションを作成する事例が掲載されています。プログラミングによりアニメーションを作成することは、国語科において本来学習すべき内容とは異なるため、国語の時間ではなく、学校裁量の時間を使った事例として紹介されています。国語科における学びを深め、国語科の学習の更なる充実につながるよう、プログラミング体験を取り入れた様々な実践が、今後積み重ねられていくことを期待しております。

菊池 英慈
きくち えいじ

茨城大学教育学部卒業(小学校教員養成課程国語選修)。茨城県公立学校教諭、茨城大学教育学部附属小学校・附属中学校教諭、茨城県教育研修センター指導主事、茨城県公立学校教頭、大子町教育委員会事務局指導主事を経て、現在、国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、学力調査官、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官(併任)。