インタビュー
公開日2018年9月11日
更新日2018年11月7日

小学校図画工作科におけるプログラミング教育

小学校図画工作科におけるプログラミング教育について、なにを狙いとしてどのように行われることが期待されるのか、国立教育政策研究所 教育課程研究センター 教育課程調査官、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官の岡田 京子さんにお話を伺いました。

国立教育政策研究所 教育課程研究センター 教育課程調査官、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官
岡田 京子
おかだ きょうこ

図画工作科におけるプログラミング教育をお聞きしました。

Q1. 図画工作科においてプログラミング教育はどのように扱われるのでしょうか?

 図画工作科におけるプログラミング体験については、学習指導要領に示されている図画工作科の内容を指導する中で実施することになります。よって、図画工作科の目標や内容に示されたことが達成されることを前提としながら、図画工作科の学習が充実するように、プログラミング体験を位置付ける必要があります。

 図画工作科においては、子供たちが対象や事象の形や色などの特徴を捉えたり、イメージをもったりしながら、豊かに発想や構想し造形的に表すことが極めて重要です。そのような学習過程において、例えば表現しているものを動かしてみることにより、新たな発想や構想を生み出したり、異なる視点からよさや美しさを感じ取ったりすることができるよう、プログラミング体験を実施していくことが考えられます。

 表現及び鑑賞の活動を通して、造形的な見方・考え方を働かせ、生活や社会の中の形や色などと豊かに関わる資質・能力の育成を目指している図画工作科の学びを深めるためのプログラミング体験とすることが重要です。

Q2. 図画工作科におけるプログラミング教育の実践事例について紹介いただけますか?

 高学年の表現「絵や立体、工作に表す活動」における実践事例をご紹介します。

 本実践は、タブレット端末を使い、MESHの機能を選択・活用しながら、表したいことを段ボールを使って工作に表すことによって、表したいことを見付けたり、工夫して表したりできるようにするものです。

 子供は、タブレット端末でプログラミングする、段ボールで工作をつくる、プログラムを見直す、さらに段ボールの工作をつくりかえるなど、つくり、つくりかえ、つくるという学習過程をたどります。

 まず、子供は、段ボールを材料として動物や乗り物など自分が表したいと思うことをイメージします。その際、自分がイメージする作品をどのように動かしたいのかも考えます。そこで、MESHの「動きセンサー」、「明るさセンサー」、「ボタンセンサー」、「GPIO」といったタグ類や、「音(標準の音と録音)を鳴らす」、「GPIOタグに接続されたモーターを動かす」といった命令の中から、自分が表したいことと合うものを選択しその効果も含めて作品を構想します。例えば、しっぽが回るわにをつくろうとすると、まず、しっぽをどうやって動かせばいいのかを考えます。そして、モーターが接続されたGPIOタグを選択し、それをどこにつければよいのかを考えます。次に、どのような時にわにのしっぽを回そうかと児童は考えます。もし、口を開けた時にしっぽを回そうとイメージすれば、子供はMESHの中から「明るさセンサー」を選択します。そして、その「明るさセンサー」を段ボールで作ったわにの口の中に入れておけば、自分のイメージ通りになると児童は考えます。さらに、どの程度わにの口があいたら明るさセンサーが反応するのかを確かめながらつくります。このように、本題材においては、自分が表したいと思うことをイメージし、それを段ボールでつくりながらMESHのセンサーを付け、プログラミング体験をしながら工作をつくります。

Q3. 上記の実践事例以外で、図画工作科においてどのような題材でプログラミング教育が実践できそうでしょうか?

 図画工作科の学習は、児童が感じたことや想像したことなどを造形的に表す表現と、作品などからそのよさや美しさなどを感じ取ったり考えたりし、自分の見方や感じ方を深める鑑賞の二つの活動によって行われます。

 Q2でご紹介した実践は表現の題材ですが、プログラミング環境を活用し、動くもようをつくるといった表現の活動も考えられます。例えば、自分が意図した動きのあるもようをつくるため、「かいた形を回転させる」、「かいた形を移動する」といった命令を組み合わせながら、かいた形が回転しながら移動する「動きのあるもよう」をつくる活動が想定されます。その際、Q2の事例にもあるように、子供は、どのように改善すれば自分の意図したもようになるのかを考えながらつくり、つくりかえ、つくることになります。このような学習を通して、図画工作科の学びを深めることにつながるプログラミング体験ができると考えられます。

 一方、鑑賞におけるプログラミング体験については、現時点では実践例を考えることが難しいと思います。

 いずれにしても、教師の創意工夫を生かすことのできるプログラミング環境を選択することが大切です。そして、一人一人の子供が表したいことを見付け、自分で表し方を工夫できるようにすることが重要です。

Q4. 一方で、図画工作科におけるプログラミング教育について、どのような授業は適切ではないとお考えでしょうか?

 学習指導要領に示される図画工作科の内容を指導する中でプログラミング体験を実施することになりますので、プログラミング体験そのものが目的とならないよう配慮する必要があります。図画工作科としての学習上の必要性や学習内容との関連がなければ、その授業は適切ではないと言えます。そうならないためには、図画工作科で育成を目指す資質・能力を踏まえて授業を構成する必要があります。

 「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」では、「図画工作科におけるプログラミング教育を具体化するためのソフトウェア等の在り方について、関係者の知見を結集して早急に検討していく必要があり、プログラミングを学ぶためにすばらしい教材が、必ずしも図画工作科のねらいの観点から価値が高いとは限らない」と述べられています。例えば、単にソフトウェア上にあるイラストを動かしてアニメーションなどを作成するもの、ロボットなど既成のものを動かすものなどは、プログラミングを学ぶための教材としては活用できても、子供が発想や構想をしたり、技能を働かせて表したり、鑑賞したりする学習が必須である図画工作科の活動としては、課題があると考えます。

 「造形的な見方・考え方」が働くような、すなわち、感性や想像力を働かせ、対象や事象を形や色などの造形的な視点で捉え、自分のイメージをもち意味や価値をつくりだすことを授業改善の視点としながら、題材や授業について考えることが必要です。

Q5. 図画工作科においてプログラミング教育を行う際、どんなプログラミング環境や教材があると望ましいのでしょうか?

 図画工作科の学習の中で、児童がコンピュータ等を活用してプログラミング体験を行う時間はそれほど多くは取れないと思います。そのため、子供にとっても先生にとっても操作方法が理解しやすいプログラミング環境や教材が望まれます。

 また、子供の創造的な学びが実現し、一層充実するものとなるような教材や、子供が材料に触れながら、つくり、つくりかえ、つくる活動を実現することができるような教材なども望ましいと思います。壊れにくいということも重要です。

 図画工作科の学習が充実するように、プログラミング体験の教材の活用方法を指導上工夫することはもちろんですが、プログラミングの教材自体に、児童が主体的に活動を進めることができるような工夫が施されていることも必要だと思います。

Q6. 最後に、プログラミング教育にどの様な期待をお持ちでしょうか?

 図画工作科では、実際にものに触れたり見たりすることが、資質・能力の育成において重要です。そのことを踏まえ、プログラミング体験について考える必要があります。

 また、教師の創意工夫を生かすことのできるプログラミング環境を選択することも重要です。教師は目の前の子供の実態を踏まえながら、子供の資質・能力の育成を目指し、学習指導要領に示す内容を教師の創意工夫を生かし題材として提示します。教師が創意工夫できる教材やソフトウェアを選び、一人一人の子供が表したいことを見付け、自分で表し方を工夫できる、または、自分の見方や感じ方を広げたり深めたりすることができるプログラミング体験とすることが大切です。

 現時点では、これらを満たす教材やソフトウェアが十分ではないという印象ですが、図画工作科の資質・能力を育成するための一つの方法としてプログラミング体験を取り入れることは可能だと考えますので、今後に期待しています。

岡田 京子
おかだ きょうこ

東京都公立小学校教諭、主任教諭、 文部科学省 学習指導要領解説図画工作編作成、評価規準の作成のための参考資料作成、特定の課題に関する調査などに携わり、平成23年より現職。